市場の変化に対応し正しい意思決定をするための店舗管理システム
ここでは人件費の効率性を知るための指標と生産性向上の方法について解説しています。
小売業や飲食業などの店舗で検討しなければならない経費には様々ありますが、経営状態を左右するほど影響力があるのが人件費です。
人件費は家賃や光熱費などほとんど動きがない経費とは違い、スタッフの数や勤務シフトの調整次第で大きく変動します。逆に考えると経営サイドでコントロールしやすい経費と言っても良いでしょう。
人件費を考える上で是非押さえておきたいのが労働分配率、人時生産性、許容人件費という指標です。
労働分配率とは粗利益を生み出すために費やした人件費の割合のことで、以下の計算式によって算出することができます。
労働分配率=人件費÷粗利益×100(%)
人時生産性はスタッフ1人当たり1時間にどの程度の粗利益を生み出したのかを知るための指標で計算式は以下のようになります。
人時生産性(円)=粗利益÷延べ労働時間
なお人時生産性は店舗のオペレーション効率を表す数字と考えることもできます。
許容人件費は店舗が考える人件費の上限額のことを言い、以下の計算式によって導き出されます。
許容人件費=粗利益×労働分配率
粗利益は売上予測×粗利益率で算出することができますので、売上目標を立ててそのために費やす人件費の上限はここまでという数字を決めることができます。
さて人件費を考える上では常に粗利益を頭に入れなければなりませんが、効率性をアップするためには人時生産性が最も重要になります。
粗利益を上げるためには売上アップか経費削減か、あるいは両方が必要になります。無闇に人件費を削るだけではかえって効率が悪くなり売上も落としかねません。
つまり許容人件費の範囲内でいかに効率よく粗利益が出せるかがポイントになります。儲かるお店と儲からないお店の差異はどこにあるかというと空き時間の使い方です。
接客がある店舗では忙しい時間帯と暇な時間帯が必ずあります。優れた経営者は暇な時間帯を使ってスタッフに倉庫を片付けさせたり必要な発注や品出し作業などを終わらせてしまいます。
逆に忙しい時間帯はスタッフ全員が接客に当たるなどして少しでも売上アップに貢献できるよう素早く体制を整えます。
このように少人数でも時間の使い方によっては商品ロスを無くし、不必要な残業時間を減らすことが可能です。一つ一つはわずかなことなのですが、積み重ねることによって人時生産性を上げることができるのです。
また繁忙期には人件費の安いアルバイトを雇うことがあると思いますが、お客様側としてはそのような違いはわかりません。
時には商品知識が求められる接客もあると思いますが、アルバイトでもその場で対応できるように売れ筋商品とおすすめ商品の情報とそれがなぜ売れているか、おすすめなのか理由も共有しておくと効率がよくなります。
人時生産性を高めるには、少ない人件費でいかに多くの粗利益を稼ぐかがポイントと説明しましたが、そのために必要不可欠なのが適切なシフト管理です。
どのスタッフをどの日時に、どのくらい配置するかを決めるシフト管理は経営戦略の要と言っても過言ではありません。
ただ、シフト管理は簡単そうに見えて難しく、スタッフの働ける日時や要望などを踏まえつつ、接客の品質を落とさないようバランスを考えながら組んでいかなくてはなりません。
そこでおすすめしたいのが、店舗管理システムを活用したシフト管理です。
店舗管理システムの中には勤怠管理システム、いわゆるシフト管理システムを搭載しているものも多く、商品管理システムと併用すればより無駄のないシフトを作成することが可能となっています。
以下では実際に店舗管理システムを使ったシフト管理のコツを紹介します。
接客の質を保ちつつ、かつ無駄を削減するためには、どの日時に何人のスタッフを配置するかを的確に見極める必要があります。
たとえば飲食店の場合、お昼時や夕飯時は混み合いますが、それ以外の時間帯にはそれほど人員を必要としません。
それにもかかわらず、どの時間帯も同じ人数を配置したら、混雑時に手が足りなくなったり、あるいは閑散時にスタッフをもてあましたりすることになりかねません。
そんなときは、店舗管理システムの売上データをベースにシフトを組んでみましょう。
売上データをいれば、いつ、どんな日時に混んでいるor空いているのか一目でチェックできるため、どこの人員を増減すればいいのか判断しやすくなります。
ベースにする売上データは過去数ヶ月分のものを参考にして平均値を出すと、今後数ヶ月のシフト計画を立てるのに役立ちます。
働く曜日や時間帯はスタッフ募集時にある程度指定することができますが、細かい曜日・時間帯指定や毎月の休日希望はスタッフひとりひとりによって異なります。
店舗の規模が大きいほどスタッフの人員も多くなるため、各々の希望を踏まえつつ、バランスの良いシフトを作成するのは至難の業です。
店舗管理システムの中には、スタッフごとの希望や条件を入力するとデータに基づいて適切なシフトを作成してくれる機能を備えているものもあり、手動で作成するよりもスピーディかつ齟齬の少ないシフトを組むことができます。
また、このシステムを活用すれば、ベテランと新人を組み合わせて教育にあたらせたり、相性の良くないスタッフ同士を離したりといった工夫をほどこすことも可能です。
日本には労働条件に関する最低基準を定めた「労働基準法」があります。
第4章には労働時間、休息、休日及び年次有給休暇についての規則が定められており、労働者が過労にならないよう配慮されています。[注1]
雇用主はこの第4章に基づいてシフトを作成しなければなりませんが、手作業でシフトを組んでいると計算ミスなどにより、労働時間が規定をオーバーしてしまったり、休息時間が不足したりする可能性が高くなります。
店舗管理システムには労基法のデータがあらかじめ組み込まれているため、法に抵触するようなシフトを作成した場合、システムが警告を発する仕組みになっています。
法を遵守できるのはもちろんですが、労務リスクを減らすことでスタッフが心身ともに健康に働ける環境が整い、生産性や接客の質の向上にもつながります。
なお、このシステムを活用すれば、的確なシフト変更を行うことが可能。ヘルプを頼む時にシフトがかぶったり、毎月の動労時間の上限を超えてしまったりというミスがなくなるため、シフト変更も柔軟に対応できます。
このページは以下の書籍を参考にして書かれています。
書籍では具体例も豊富ですので是非あわせてご参考にしてください。
【売り上げを伸ばす・利益を出す やさしくわかる「お店の数字」著者:山田公一 日本実業出版社】